インタビュアー:岐阜信用金庫 高富支店長代理 中根松汰(法人担当)
人材育成を見つめなおし、独自の評価制度の確立で従業員のやりがいを支援
中根:御社は、多様な人材の採用、働き続けられる職場環境の整備、スキルアップ支援などに取り組まれており、PIF評価書にも「未来へつながる人材の育つ会社」を掲げています。これを掲げるに至った背景やきっかけを教えてください。
小林:当社の社会課題の一丁目一番地は人材育成だと考えています。企業が社会に対してどのような価値を提供するのか、そのために何を学び、どのように事業に反映していくのか。それが企業として大切な役割であり、そのためには、人材が企業の中でどう動いていくかが大事だと思っています。PIFを活用することで資金面での後押しもいただけたため、その資金を未来への投資として人材育成に充てようと考えました。
中根:人材不足が叫ばれる中で、従業員の定着率が非常に良いとお聞きしました。具体的にはどのような取り組みをされていますか。
小林:定期的な研修を行っています。なぜそれを作るのかとか、どのようにして作っていくかというところには、人の考え方が絶対に反映されます。どのような姿勢で事業に取り組むかを考えてもらううえで、自分たちの想いを言語化し、かつ従業員がそれをしっかりと共有化・腹落ちしたうえで作っていかないと意味がないと思います。そのためまずは研修によって、なぜこの事業をやっているのかを落とし込んでもらうようにしています。
中根:ありがとうございます。実際に取り組み前と取り組み後でなにか変化はありましたか。
小林:ここぞっていうところのエネルギーは変わってきていると感じています。目標に対して難しい部分や到達できない場面で、何が原動力になるかというときに、「自分たちは何のためにこの事業をやっているのか」というところが原点だと思います。損得勘定だけの話でいくと、少ししんどいからやめようかとなってしまいます。それでも、何のために事業をやっているのかを考えた時、未来の自分のためであったり、お客さまのためであったり、このような想いが必要であり、一番大切になってきます。目標を達成するために少ししんどくても頑張れるとか、モチベーションが上がって前できなかったことができるようになるとか、原点回帰が成果につながっていると実感しています。
中根:私もそうですが、上司や同僚など、周囲から評価されることがモチベーションの向上につながっていると思います。御社では、どのような評価体系を取り入れていますか。
小林:現在、評価制度を改定中で、独自の「51点モデル」というのを構築している段階です。成果だけではなく、取り組み姿勢であったり、自分たちの考え方、経営理念というところに、しっかりとコミットして行動しているかというところもちゃんと評価したいと考えています。成果も大事だし、想いや姿勢、考え方というのも大事。50対50だと思っているけど、どちらの方が大事かと言われれば、成果は49点で、想いや姿勢というところは51点だと考え、少し比重を多くする評価体系を人事制度に取り入れようとしています。
障がい者支援から生まれる利他の精神と、相乗効果の実感
小林:慢性的な人材不足で、どのような人材に活躍してもらいたいかを考えたときに、技能実習生などもありますが、仕事に馴染めず退職してしまったとか、『実は発達障害なんです』とか『グレーゾーンなんです』と言われた方が思い浮かびました。能力のできるできないでだけで判断したくないという気持ちがあり、作業の切り分けをしていくことで、多様な人材がお互いに協力しながら、そこを補い合っていく組織がいいなと思ったのがきっかけです。しかし、実際に障がい者雇用を積極的にやっていこうとしても、ノウハウもないし、ハンデを支援していく技術もない。そこで、弁当事業と福祉事業を掛け合わせたフランチャイズがあったので、参画することで福祉のノウハウも教えてもらえるし、一度挑戦してみようと思いました。
中根:現在の手ごたえはいかがですか。
小林:なかなか厳しいのが現状です。実際に自分たちが普通にできることができなかったりする中で、どのように支援や教育していけばいいのかというところに毎日奮闘しています。障がい者の方たちでも作業ができるように切り分けして役割を与え、とても重要な仕事なんだよと教えていくことで、お客さまからの評価ももらえるし、相乗効果として小林食品の繁忙期にヘルプにいけたり、Tsukushiに軽作業を委託できます。2、3年前は、忙しくて仕事を断ることもあったけど、今は受けきることができており、小林食品の生産性は確実に上がっています。今後は、施設外就労でTsukushiでチームを組んで、小林食品の仕事の一部を請け負っていくとこができると、より人材の多様化が進むし、生産においても相乗効果が生まれるんじゃないかと思っています。
中根:就労継続支援A型事業をはじめたことで、従業員の皆さまにどのような変化がありましたか。
小林:障がい者雇用に初めて触れ合う方も多数いるので、働くことについて考える良いきっかけになっています。自分だけでは挑戦してもできなかったことを、いろんな人を介すことでできていくのは価値のあることだと思います。モノを作った喜びや、それを買ってもらって喜んでくれるお客さまの存在もあります。これを自分たちが作ったんだという自信がついて成長できることがやりがいにつながっていると強く感じます。
中根:株式会社Tsukushiで現在の事業を始めて、一番課題だと思うことは何ですか。
小林:就労継続支援A型の最低賃金が上がっているので、最低賃金に見合ったお仕事をしていかないといけない。そのためには、能力に見合った生産を当てはめたり、作業を切り分けていくことが必要不可欠で、これが結構難しいです。
また、ただ仕事を請け負うだけではよくないと思っていて、どのようなものが社会に対して必要になってくるのか、喜んでくれるのかというところを、ハンデがあろうがなかろうが自分たちで考えていくことがすごく大切です。弊社はもともとメーカーで、製造することは得意でも企画や営業は経験が浅いため、企画力やマーケティング力、営業における提案力というのは今後育てていかないといけない最大の課題だと感じています。
中根:ホームページ上では、一般就労へのステップアップについても紹介されています。具体的にはどのような支援をされていますか。
小林:支援は大きく分けて、仕事面での支援と、仕事に臨むまでの生活面の2つがあり、特に大事なのは後者だと考えています。仕事に臨むうえで、挨拶などのコミュニケーションは直接仕事に関係しませんが、間接的にはとても大事です。中にはコミュニケーションをとるのが苦手、取りたくないという方もいますが、これを怠ると職場の雰囲気がぎこちなくなります。組織においてコミュニケーションはとても大事な要素だと伝え、できないことはメモを取り、それでもできないことはさらにステップを細かくして、繰り返し覚えていくことで身体感覚として身に着け、習慣化できるよう支援しています。
フードロスの取り組みで、地域の方や従業員を「食」で笑顔に
小林:お弁当は、毎日ちょうどではなく、お客さまの急な要望に応えられるよう余剰に製作しています。毎日完売とはいかないため、残ったお弁当は従業員に割引販売しています。割引弁当は従業員からの人気が高く、ちょっとした福利厚生にもなるし、フードロスにつながっていると思います。また、総菜部門で余った食材や原料を特注弁当として有効的に活用することでオリジナリティを出すことができ、お客さまにも喜んでいただけています。この利活用もフードロスにつながり、お客さまにも喜んでもらえて一石二鳥かなと思っています。
中根:フードロスの取り組みによって、業績やお客さまの反応など変化はありましたか。
小林:総菜部門で使っている食材をお弁当に利用する事業者は少ないと思いますので、そこは地元のお弁当屋との一番の差別化になっていると思います。価格で見ても、このボリューム、クオリティとしてはかなり割安でコストパフォーマンスは高いと思っていますし、その結果が売上高にも反映していると感じています。ただの業者のお弁当ではなく、愛情込めて作ったお弁当を食べて、お昼からも頑張ってもらいたいという気持ちが伝わり、お返しにメッセージカードなどをいただくことがあったりと、お客さまにも喜んでもらえていると思います。
中根:最後に、今後のビジョンについて教えてください。
小林:まず地元を優先していきたいと考えており、地元食材を用い、地元の人に食べていただく。地産地消を1つのコアとして取り組んでいきます。また、自分たちが作りたいものを作るだけでは自己満足になるし、お客さまの声だけに合わせていたら、自分たちの作りたいものと一致しないため、商品づくりを繰り返し試行錯誤していくことが大事です。いい商品を作るためには、想いや理念、自分たちの会社における存在価値を言語化して、全員が共通認識を持たなければなりませんが、一朝一夕にはいかないため、共通認識を時間をかけて深めていく必要があります。そのためには、引き継ぐ人、引き継がれる人が必要で、冒頭に話した一丁目一番地の話に戻りますが、人材育成がすごく大切になります。組織や、チームで取り組むにあたり、自分では気づけていない新しい価値観や想いを取り入れるには、外国の方も高齢者も若い人も障がい者雇用の方も必要です。障がい者雇用を行ううえでは、障がいと福祉の事業が必要だし、企画販売では専門の部門が必要になる。各々の得意分野を連携させたところに、今後の弊社の持続可能性があり、小林食品グループの発展につながっていくと考えています。


