インタビュイー:アサヒ精機株式会社 代表取締役 石榑 利彦様   専務取締役 石榑 亜矢様
インタビュアー:岐阜信用金庫 六条支店(法人担当) 水野 隼多

持続可能な経営に挑むきっかけと考え方の変化

水野:まずは御社の持続可能な経営、所謂、サステビリティ経営の取り組みに至るきっかけと考え方の変化を教えていただけますか。

社長:まずこれまでの弊社の考え方は、現状を維持することに精一杯で、その場その場で与えられた仕事について対応していく状況でした。皆さまも感じていると思いますが、昨今の外部環境は昔と比較して速いスピードで変化していますよね。そんな中、どの様にすれば経営が持続できるのかを考えたことがきっかけですね。今までの様に自分達つまり経営層だけが先頭に立って考動するだけではなく社員一丸となって、目標に向かって進んでいく、時代時代に対応した働き方やお客様のニーズの変化に対応したPDCAサイクルを回し続けていくことが持続可能な経営ではないか、との強い考え方に至りました。

水野:なるほど、今の社長の強い考え方とコーポレートメッセージにある『挑む、理想の先へ』からも社長の強い覚悟が伺えます。

社長:ありがとうございます。これまでの様な現状を維持することに重きを置く経営では、10年、15年は問題ないかもしれませんが、その先は衰退の道しかない。新しいことだけをするわけではないですが、今ある経営基盤をより強化していくことや新しいアイデアを生み出す為に新しい学びを得ること等を大切にしていかないと持続可能な経営とは言えませんよね。今、私たちがサステナビリティ経営の流れを確立することができれば、例え何十年経って代表や社員が変わったとしても、会社の文化として定着していくことで持続可能な経営になると信じています。

水野:ありがとうございます、社長の思いが伝わってきます。それでは話せる範囲で結構ですので、具体的な取組み事例を教えていただけますか

社長:はい。持続可能な経営として、弊社は、①効率化設備を中心とした省力化機械、治具の設計、加工、組立、販売を業としています。②自律した社員を育成する為、人事制度を刷新しました。③AIによる原価計算や生産計画策定を目指し導入しています。

水野:社長、正にサステナビリティな取り組みですね。1つずつ質問させていただきます。

困ったことの解決に挑む

水野:御社は、加工機メーカーであり、ワイヤーハーネス加工の効率化を支えるオプション製品を主力製品として、独自の技術による製品開発、製品提供にて、お客さまの生産効率の向上、生産品質の安定化を支え、自動車産業をはじめとする、多くの産業の発展に貢献されていますが、御社の効率化を考えた主力商品の一例を教えていただけますか。

社長:弊社は自動車の神経回路ともいえるワイヤーハーネスの製造に関わる効率化設備を開発、製造しています。一例としては、ワイヤーハーネスの先端に取り付けられる防水用ゴム栓をハーネス加工機に自動で供給する防水ゴム栓供給機があります。この防水ゴム栓は自動車が雨や砂など様々な環境下でも走り続けられる性能を担保する為に非常に重要な部品です。その防水ゴム栓を指定された向きで安定して供給することでハーネス製造の効率化と安全性に大きく貢献しています。

水野:相当に大事な部分に携わっているのですね。その機械の開発は、何がきっかけだったのですか。
社長:ワイヤーハーネス生産業者との会話の中で、現状のゴム栓供給機では外部環境(湿度、気温、埃など)に生産速度、安定性が大きく左右されてしまい困っているということを伺ったことがきっかけでした。

水野:そうなのですね。その課題を解決する為に、御社では初挑戦となるこの機械の開発に挑戦されたのですね。


社長:はい。それで完成した商品が弊社を代表する商品の一つとなりましたし、発注先からは安定した品質と供給、更に効率化を図ることができたと笑顔を頂き、今ではその機械の9割が海外工場で利用されています。今後、更に労働人口が減少していきます。そんな折、お客さまの生産効率を確実に維持していただく為に、お客さまの困ったを解決する省力化、唯一無二の提案にどんどん挑戦していきたいです。

自律した社員育成に挑む

水野:御社は高い技術力を有す社員がいますが、そんな中でも人材育成がまだ必要ですか。

専務:ありがとうございます。弊社の強みは技術力にあると考えています。しかしながら、多くの企業が抱えている課題と思われますが、経験や個人の能力に依存しやすく、業務が属人化してしまっている点が課題だと認識していました。その様な状態で持続的な成長ができるのかと考えたことが人材育成に取り組むきっかけです。

水野:そうなのですね。そこでどんな取組を開始されたのですか。

専務:まず、全社員にMVV(Mission・Vision・Values)を共有し、それに基づいて人事制度を新しくしました。この制度は評価を目的としたものではなく、社員一人ひとりが自分の役割や成長の方向性を理解し、自ら考え行動できる自律した社員を育成することを目的としています。その為、一般社員から管理職までの役割を持続的な成長を見据え、『あるべき姿』から整理し具体化しました。制度の考え方については、社員向けの説明会を実施しており、今後は、管理者向けの人事評価研修も予定しています。評価については、自己評価、管理者評価、最終評価の3段階とし、経営層に集中していた評価プロセスに管理者も関わることで、多面的で納得感のある評価と管理者による育成に繋げていきたいと考えています。
水野:社員様から様々な意見がありませんでしたか。

社長:不安な声もありましたが、それよりもあるべき姿を示したMVVを判断基準として明確化したことでキャリアパス等のやりがいが生まれました、との意見も聞くことができましたね。企業は人が財産、自律した社員を育成することが正に持続可能な経営には大切だと考えます。全社員がワクワクして働き続けられる、やりがいを持って成長し続けられる職場にしたいですよね。

AI導入から社員のやりがいや誇りの育みに挑む

水野:AIを導入されましたが、きっかけを教えてください。

専務:弊社では、製造部門だけでなく、原価計算や生産計画といった管理部門においても特定の人に依存する傾向が強く、属人化が進んでいることが課題でした。又、これらの業務は専門性が高く時間も多く要する為、誰でも一定の品質で対応できる仕組みを構築したいと考えていました。その様な中で、課題の解決策として岐阜信金さんよりAI導入のご提案をいただきました。

水野:そんな風にお話しいただきありがとうございます。

専務:まだまだAI活用の入口ではありますが、属人化している業務にAIを活用することで、人は人でしかできない付加価値の高い業務に時間を使い、より力を発揮できると考えます。

社長:短縮できた時間については、部署を超えた全社員で新商品のアイデアを出し合ったり、未来の新しい事業展開を考える時間にしたい、そうすることで一社員が考えたアイデアが世界に通用する商品の開発のきっかけになった等の誇りややりがいに繋がると思うのですよ。

水野:AI導入を社員のやりがいに繋げる発想は、なかなか聞くことができないです。大変すばらしい考え方ですね。

社長:ある意味人材育成にも繋がりますよね。ひいては持続可能な経営に繋がると信じています。

挑む、理想の先から誇りが生まれる

水野:最後に、御社の未来像をお聞かせください。

社長:コーポレートメッセージの「挑む理想の先へ」にこだわり続けたいですね。「お客さま・市場・世界の理想」に終わりはないと思っているので、常に「今の理想を超えてゆく」ことをずっと繰り返し続けていきたいと思います。そのためにも、従業員全員が技術を磨き、切磋琢磨して勉強していくことが必要です。先代の、お客さまの困ったを解決するためなら、やれるまで、結果が出るまでやり続ける姿勢を継承し、ものづくりの理想を超えられる強い会社を目指していきます。将来、私が社長を退いた後も、これらの精神を引き継ぎ、弊社の技術力を深化させ、モノづくり企業として、世界に通用し、お客さまの期待以上となる良いい機械を提供し続けていくために、今後も弊社一丸となって真摯に、且つ、誇りをもって業務に邁進したいと思います。

水野:「技術力の深化」、「自律した人材を育成するための人事制度の改革」、「AIの導入という設備投資」などに「挑む」御社の取り組みが、正にサステナビリティ経営を実践されていると感じました。本日は長時間にわたりインタビューにお答えいただきありがとうございました。