インタビュアー:岐阜信用金庫 福光支店長代理(法人担当) 後藤 康佑
第1章 サステナブル経営への挑戦 ―企業価値を高める第一歩
社長:最初のきっかけは、取引先との間で開催された勉強会で、「これからは企業として取り組まなければならない」という話を聞き、自社としても刺激を受け、2021年頃から本格的な活動をスタートしました。
後藤:どのように取り組まれているのですか。
社長:当初は社内にも知識を持つ社員は少なく、何から始めればよいのか分からない状態だったので、まずは、社内の選抜メンバーを立ち上げ、みんなで勉強し、話し合いながら会社を見つめ直しました。「会社として何を目指すのか」、「何ができるのか」などを一つひとつ丁寧に話し合い、その選抜メンバーが中心となって全社員への啓蒙活動に広げていきました。
後藤:トップダウンで指示を出すのではなく、ますは選抜メンバーの社員が理解し、仲間へ伝える仕組みを構築されたのですね。啓蒙活動の内容を具体的にお伺いできますか。
社長:「自分たちで会社を良くしていこう」という気持ちが生まれ、社員一人ひとりが主体的に取り組む風土が醸成され、人材育成という面でも大きな効果があったと思います。また、この選抜メンバーを中心に、「環境への取り組み」や、「企業全体の組織力向上」などの話し合いがもたれています。
後藤:環境への取り組みについて、お取引先から具体的に求められているのでしょうか。
社長:「自動車業界では、カーボンニュートラルへの対応が非常に重要になっています。取引先からも2030年までのCO₂削減目標が示されており、私たちもその流れに対応していかなければなりません。当社も、中小企業版SBT認定を取得し、2019年度を基準として2030年までにCO₂排出量を27%削減する目標を掲げています。数値目標を明確にすることで、全社員が同じ方向を向きながら改善活動を進めています。
後藤:CO₂削減では、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?
取締役:一番大きいのは電力使用量の削減です。工場では排出量の大半を電力が占めています。そのため、生産性を高めることが、そのまま省エネにつながると考えています。
後藤:生産性を高めるために、特に重視している取り組みはありますか?
社長:特に重視しているのが、不良品ややり直し作業の削減です。当社では、「自工程完結」という名で呼んでおりますが、不良が発生すれば、加工をやり直すために余分な電力や時間が必要になります。品質向上と省エネは決して別々の取り組みではなく、同じ方向を向いた改善活動です。
設備面では、コンプレッサーの更新や省エネ型エアコンの導入、工場内の空調効率改善、エア漏れ対策など、できることを一つずつ積み重ねています。更新には多額の費用が必要となるため、全てを一度に実施できるわけではありません。それでも、「できることから着実に取り組む」という姿勢を大切にしています。
また、社員一人ひとりが無駄な電気を使わないという意識を持つことも大切です。小さな改善を積み重ねることが、大きな成果につながると考えています。
後藤:「自工程完結による不良0に向けた取り組み」についてお伺いしましたが、品質向上のために最も意識されている取り組みは何でしょうか?
社長:設計、データ作成、加工、組立という各工程で、それぞれが責任を持ち、その工程内で品質を完結させる仕組みを徹底しています。
後藤:各工程で工夫していることはありますか?
社長:各工程でチェック機能を見える化させた「カルテ」という管理方法を徹底しています。各工程での注意点や過去の不具合を記録し、誰が見ても同じ品質を維持できるようにしています。問題があればすぐ共有し、次に同じミスを繰り返さない。それを積み重ねてきました。
後藤:素晴らしい取り組みですね。数値としても改善されてきているのでしょうか?
社長:以前はやり直し工数が10%を超えていましたが、現在では6~7%程度まで改善し、大きなやり直しはなくなりました。確実に成果は出ています。金型づくりは一品一様です。実際に加工してみないと分からない部分もあり、最後は熟練した技術者の判断が必要になりますね。一つひとつ仕様が異なる金型製作だからこそ、人の経験や感覚が今なお重要な役割を担っています。
第2章 品質を支える「人」と「ものづくり」―技術を磨き、未来へつなぐ
社長:入社後は約1~2か月かけて社会人マナーや基礎知識を学び、その後は現場で実践を重ねながら技術力向上につなげています。また、技術力向上を目的とした競技会も開催しています。
後藤:ホームページでその取り組みを拝見させていただきましたが、競技会は社員の皆さんのモチベーションにもつながっているのではないでしょうか?
社長:そうですね。競技会は技術を競うだけでなく、自分の成長を実感できる機会にもなっています。毎日の仕事だけでは気づけない課題も見えてきますし、仲間同士で刺激を受けながら技術を磨くことができます。また、技術だけでなく、会社全体の一体感を生み出すため、地域清掃活動やSDGs活動など、部署を越えた交流の機会も積極的に設けています。会社全体で活動することで、普段かかわる機会が少ない社員同士とのコミュニケーションも生まれます。それが働きやすい職場づくりにもつながっています。
第3章 「人」を大切にする会社へ ―健康経営と依頼への挑戦
取締役:例えば、歩数計測を部署ごとにチームを作って競い合い、会社全体で楽しみながら健康づくりができるよう工夫しています。順位を提示し、上位チームにはちょっとした景品を用意して、楽しみながら自然と歩く習慣につながっていますね。会社内の誰もが目にする場所へ順位表を掲示し、見える化することで、社員同士の会話も増え、部署を越えた交流にもつながってきています。その他、定期健康診断におけるオプション検査の費用補助や禁煙への取り組み、ストレッチ教室の開催、社員食堂でのカロリー表示や、白米だけでなく雑穀米を用意するなど健康に配慮したメニューを選べるようにしています。日常の中で自然と健康を意識できる環境づくりを進めています。
取締役:ストレッチ教室については、徐々に参加人数も増えてきており、次回は抽選を検討しなければいけないくらい人気が出ていますが、続けていくことが大切だと思っています。
後藤:ありがとうございます。このような取り組みは福利厚生という枠を超え、「社員が長く安心して働ける会社づくり」そのものですね。
第4章 未来への展望―未来への挑戦
後藤:御社の10年後、20年後を見据え、どのような会社を目指していきたいですか?
社長:一番は「良い会社」づくりです。お客様から「安心と信頼のある会社」と思っていただける会社を目指しています。そのためには、環境への配慮や品質向上だけではなく、社会や時代の変化へ柔軟に対応していくことが欠かせないと思います。製造業を取り巻く環境はこれからも大きく変わっていくと思いますので、その変化に対応できる会社でありたいですね。そのためには、新しい考え方も積極的に取り入れながら、会社も成長していかなければならないと思っています。人を作り育て品質を作り込むという会社風土を守りながら、「選ばれる会社」として、国内はもちろんのこと、広がりゆくグローバル市場に柔軟かつ的確に対応し、世界の金型トップメーカーを目指します。
後藤:これから製造業を目指す若い世代へ伝えたいことはありますか?
社長:ものづくりには、自分が携わった製品が世の中で役立っているという大きなやりがいがあります。完成した車を見て、「この車づくりに自分が関わっている」と思える仕事は、本当に誇りを持てると思います。特に、昔から働いている社員は、自分が携わった商品を街で見かけると、本当に嬉しそうに話してくれます。そういう喜びをこれからの若い人たちにも知ってもらいたいですね。
後藤:同社が取り組むSDGsやカーボンニュートラル、品質向上、健康経営といった活動はそれぞれが独立したものではなく、すべてが「人を大切にする経営」という一本の軸で繋がっていると思いました。社員一人ひとりが成長し、その力が品質向上に繋がり、品質が顧客からの信頼を生み、信頼が企業の持続的な成長へと結びつく。その好循環を実現するために、同社では日々改善を積み重ねています。「より良い会社をつくりたい」という社長の言葉は決して大きな理想論ではなく、社員一人ひとりと真摯に向き合い、小さな改善を積み重ねてきたからこそ生まれた実感のこもった言葉でした。環境への責任、ものづくりへの誇り、そして人を大切にする企業文化。貴社の歩みは、これからの製造業が目指すべき姿を示しているように感じました。


