インタビュアー:岐阜信用金庫 美山支店長代理 菊谷紘希(法人担当)
メンバー第一主義の原点
水谷:幼少期、創業者である祖父も含めていつも7人~8人で食卓を囲んでいました。そこでいつも祖父が「社員のおかげでご飯食べさせてもらえている。」、「社員は家族」というのをよく話していたんです。当時は会社に子供が当たり前に出入りできる時代で、私自身も社内で多くのメンバーに囲まれて育ちました。その頃から、会社が守るべき一番の対象はメンバーとその家族であるという意識が、DNAとして刷り込まれていたのだと思います。
菊谷:幼少期からの環境が原点にあるんですね。そこから現在の確固たる経営方針にはどのように繋げていったのですか。
菊谷:理念という抽象的な思いと、具体的な行動の仕組みがしっかり噛み合ったからこそ、メンバー全員のベクトルが揃う経営計画書が生まれたのですね。
水谷:そうなんです。ただ僕が一人で「人を大切にしよう」と言っているだけでは、何も変わらないですからね。行動指針として明確に数値や仕組みに落とし込んでいるからこそ、メンバー全員が同じ方向を向いて動けているんだと思います。
9年前に始まった教育体制とSNS発信の変革
菊谷:「人を大切にする」姿勢は、近年の採用活動や福利厚生にも色濃く表れていますね。近隣の企業さんでは新卒採用に苦労しているお声をよく耳にするのですが、御社には若い従業員の方が多く勤務されています。採用活動の上で、何か工夫している点はあるのですか。
水谷:実は9年前、当時の採用を担当していた総務部長が熱心な人で、たまたま一度に9人の新卒採用が決まった時期があったんですよ。当時の会社のキャパシティとしては、かなり無理をしましたが、せっかく入社してくれた若い子たちを大事に育てていきたい、という思いでそこからメンター制度や教育体制を一気に作りこんできました。この経験が原点となり、現在はinstagram等を通じて、あえて飾らない「等身大の働く姿」を発信するスタイルへと繋がっています。
菊谷:私も御社のinstagram楽しく拝見させてもらっていますが、その中でも賞与を社長自ら働いている従業員の元へ赴き手渡しされている動画が非常に印象的でした。
水谷:単に口座へ振り込むだけでなく、私が現場へ直接行って「いつもありがとう」と言葉を交わしながら渡すことに意味があると思ってこの行動は継続しています。あと、学生さん向けのインターンシップでもみっちり業務を体験してもらい、入社後の自身のイメージをより鮮明にできるようにするなど、若い世代が安心して力を発揮できるような環境づくりを意識して継続しています。
菊谷:若い方を含めた御社で働くメンバー全員の「心理的安全性」が非常に大切にされているんですね。
水谷:そうですね。採用を強化しようとすると、どうしても採用テクニックを強化したり、自社をいかに良く見せようとするか、というところに注力しがちだと思うんです。ただ、本当に大事なのはそこではなくて、会社のリアルな空気感や働いた時のイメージをどれだけ持てるかだと思うんです。だからこそ弊社では、SNSに投稿する動画内でも、映る部分をきれいに整えたり、着飾ったりすることなく、ありのままを載せることを意識しています。そうすることで、「入社したはいいけど全然思っていたのと違う」というギャップを最小限に抑えるよう取り組んでいます。この土台があるからこそ、若い子たちが継続的に弊社に入社してくれて、入社後も定着してくれているんだと思います。
社内の知恵(ナレッジ)をAIで繋ぐ組織改革と、10年20年先のビジョン
菊谷:御社は社内で「生成AI」を積極的に活用されていると思います。世間では、AI導入によって業務の自動化や効率化することに注目が集まりがちですが、御社ではAIをどのような形で利用されていますか。
水谷:AIを導入している企業は多くあると思いますが、すべての企業が導入の成果を出せてないのが現状だと思います。あくまで私の考えですが、その理由は人間の仕事をそのまま「置き換え」ようとして100%の正解を求めてしまうからだと思います。AIの本質は正解を導き出すことではなく。人間の能力や創造性を拡張するいわば「壁打ち相手」として使うべきだと私は考えています。現在、弊社では手順書にに載っていない先輩職員との会話や日報といった「企業独自のナレッジ(暗黙知)」をまるごとデータベース化する取組を進めています。これをAIに学習させて、新人が自分で考えて行動できる教育環境づくりに役立てたいと考えています。実際このシステムの試作を今年7月から8月にかけて形にする予定です。
菊谷:単なるシステム化ではなく、社内の「生きた知恵」を循環させて人を育てる、まさに本質的なDX化ですね。こうした取組は、御社が目指す未来にどう繋がるのでしょうか。
水谷:2026年の経営計画書にも掲げていますが、今、新しいビジネスとして「コミュニティ創り」にとても注力しています。社会的に人口減少が進む中、美山地区においてもその現象は顕著に表れています。そうした世の流れの中で「自分さえ良ければいい」というマインドは持つべきではないと考えています。地域が衰退していけば、我々も一緒に衰退しやすくなると思います。もちろん、周りには協力会社さんも多くあるので、その一社一社が再度輝いて、全体がもう一度ぐわっと盛り上がる地域創生の形が一番美しいなと思うんですよ。そのためには何をすべきか考えたときに、弊社の場合だとinstagramであったり、マーケティングであったり、デジタルであったり、サステナビリティだと思って活動させてもらっています。近隣の企業さんでも各々いろんな課題を抱えていると思うんですけど、その課題の中に同じ課題を抱えている企業さんもあると思うんです。そこで一人では答えが出なかったり、思い切った行動ができない、というのもあると思うんですけど、そういう時に近隣の企業さん同士で、仲間がいるから学べるし、行動できるよね、というコミュニティが出来ると良いんではないかな、と考えています。
菊谷:仰る通りですね。地域の周りの企業も含めて、地域みんなで輝く姿こそ真の地方創生ですね。このコミュニティ創りは、御社に対して、将来的にはどのような相乗効果をもたらすとお考えですか。
水谷:もちろん、私たちの本業がしっかりしていることが大前提です。ただ、人口減少や物価高の影響を受けて住宅着工件数が減少する中で、同業者同士で仕事を奪い合うというのは違う気がするんですよね。このコミュニティを通じて他社と一緒に学び、行動した知恵を、また自社の本業に持ち帰り再度投下する。そうやって自社を強くしていく方法もあると思うんです。なので、本業も強くしながら、地域コミュニティも活性化していくような、そんなバランスの取れた状態になれれば理想かなと思います。
菊谷:素晴らしいですね。自社内だけでなく、コミュニティを活かした外部からの学び・知恵を社内で循環させて本業をさらに研ぎ澄ましていくということですね。周りを巻き込んで地域全体として成長していくというのは、サステナビリティの本質だと思います。御社が描く10年・20年先を見据えたコミュニティの実現に向けて、私たち岐阜信用金庫も地域金融機関として寄り添い、共に歩んでまいります。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。



