インタビュイー:株式会社小林製作所 代表取締役社長 小林 一彦様 専務取締役 小林 美千代様
インタビュアー:岐阜信用金庫 関支店(法人担当) 小島 由菜
インタビュアー:岐阜信用金庫 関支店(法人担当) 小島 由菜
従業員ファーストが支える「健康経営」の軌跡
小島:会社方針にある「従業員・顧客・地域と共に価値を創り、信頼を育む」という理念への想いをお聞かせください。
社長:これまでは「すべてはお客様の笑顔のために」という理念のもと、高精度な金型作りに邁進してきました。しかし、現在は「お客さまの笑顔のためには、まず従業員が幸せになるべきだ」と考えています。近年はお客さまも、来社された際の職場の雰囲気や働く人の表情をよく見られています。従業員が活き活きと働くことで社内の雰囲気が良くなり、お客さまとのコミュニケーションも円滑になります。結果として営業面にもプラスになり、全体でお客さまを支えていくという、次のステージに向けて舵を切っています。
小島:2020年の「清流の国ぎふ健康宣言」から始まり、2021年からは毎年「健康経営優良法人」の認定を取得されています。2025年には「ネクストブライト1000」にも選定されました。また、最近では、御社の健康経営への取り組みが評価され、事例発表も行われていますよね。このように早くから健康経営に注力し継続されているきっかけや、具体的な効果はいかがでしたか。
社長:金型製造に携わる職人の技術を蓄積・継承していきながら、年々職人の高齢化が進む中で「会社全体で健康をサポートして長く元気に働いてほしい」という考えが背景にあります。具体的な活動としては、食育・禁煙への取り組み、就業時間内に行うストレッチ講座の実施、また休日を利用した「クアオルト健康ウォーキング」の開催等、職場全体で健康づくりに取り組んでいます。
小島:そのような活動を通じて、従業員さんの変化はありましたか。
社長:これまでは「すべてはお客様の笑顔のために」という理念のもと、高精度な金型作りに邁進してきました。しかし、現在は「お客さまの笑顔のためには、まず従業員が幸せになるべきだ」と考えています。近年はお客さまも、来社された際の職場の雰囲気や働く人の表情をよく見られています。従業員が活き活きと働くことで社内の雰囲気が良くなり、お客さまとのコミュニケーションも円滑になります。結果として営業面にもプラスになり、全体でお客さまを支えていくという、次のステージに向けて舵を切っています。
小島:2020年の「清流の国ぎふ健康宣言」から始まり、2021年からは毎年「健康経営優良法人」の認定を取得されています。2025年には「ネクストブライト1000」にも選定されました。また、最近では、御社の健康経営への取り組みが評価され、事例発表も行われていますよね。このように早くから健康経営に注力し継続されているきっかけや、具体的な効果はいかがでしたか。
社長:金型製造に携わる職人の技術を蓄積・継承していきながら、年々職人の高齢化が進む中で「会社全体で健康をサポートして長く元気に働いてほしい」という考えが背景にあります。具体的な活動としては、食育・禁煙への取り組み、就業時間内に行うストレッチ講座の実施、また休日を利用した「クアオルト健康ウォーキング」の開催等、職場全体で健康づくりに取り組んでいます。
小島:そのような活動を通じて、従業員さんの変化はありましたか。
専務:例えば、従業員家族も一緒に参加できる「クアオルト健康ウォーキング」では、出発前や活動中に血圧や心拍数を測定しながら、各自が無理なく市内の山や神社を巡ります。自然の中や街を歩くことで、心身がリフレッシュされるだけでなく、ウォーキング中の会話を通じ、普段かかわりの少ない部署の従業員と交流できたり、業務中とは異なる雰囲気での会話ができるなど、コミュニケーションの活性化がすすみ、社内の会話が劇的に増えたと感じています。その結果、業務中においても若手がベテランに質問しやすくなり、会社の生産性の向上や離職率の低下に繋がっています。
また、当社の健康経営において、中心的な役割を果たしているのが「万歩計」の取り組みです。全従業員が万歩計を所有しており、社内で毎月歩数を競い合いながら健康意識を高めています。毎月表彰を行っており、上位者には、ご家族みんなで食卓を囲む時に使えるように、減塩しょうゆや麹などの健康食品を配り、日常から従業員家族も含めて健康意識を高めてもらえるようにしています。現在74歳で一番元気なベテラン職人がいますが、彼が日々運動を継続して活き活きと働く姿は、若手やインドネシアの実習生にとっても最高のロールモデルとなっています。
小島:従業員さんだけでなく、その家族のことまで大事にされていることが伝わってきます。職場でのコミュニケーションの活性化が御社の生産性の向上や、離職率の低下につながっているということで、改めて、私自身、「会話すること」の重要性を感じました。
また、当社の健康経営において、中心的な役割を果たしているのが「万歩計」の取り組みです。全従業員が万歩計を所有しており、社内で毎月歩数を競い合いながら健康意識を高めています。毎月表彰を行っており、上位者には、ご家族みんなで食卓を囲む時に使えるように、減塩しょうゆや麹などの健康食品を配り、日常から従業員家族も含めて健康意識を高めてもらえるようにしています。現在74歳で一番元気なベテラン職人がいますが、彼が日々運動を継続して活き活きと働く姿は、若手やインドネシアの実習生にとっても最高のロールモデルとなっています。
小島:従業員さんだけでなく、その家族のことまで大事にされていることが伝わってきます。職場でのコミュニケーションの活性化が御社の生産性の向上や、離職率の低下につながっているということで、改めて、私自身、「会話すること」の重要性を感じました。
地域を守る強靭な「BCP」
小島:続いて、御社のホームページでは「BCP訓練を継続実施」、「レジリエンス認証」、「関市災害時協力事業者登録」など手厚く取り組まれている事例が紹介されていますが、きっかけについて教えてください。
社長:災害時やサプライチェーン強靭化は、重要なサステナビリティ経営課題と捉えているからです。自動車部品を多く手掛ける当社にとって、災害による供給ストップは最大のリスクです。いち早く復旧するためには、予備部品は当然ですが、「何を最優先で復旧させるのか」など、適切な判断が求められます。そのためにも、実践的なBCPを構築し、年2回の訓練や消防署を招いた救命訓練を継続しています。
専務:身近なところでは、工場内の「物の配置」や「安全な通路」にも気を配るようになり、普段の5S活動の定着に直結しました。また、災害の被害が大きく、社内で復旧できないときは、他県・近隣の協力会社と連携し、供給を止めないように合同訓練を重ね、有事において、お互いを助け合える「地域ハブ」の体制を構築しています。
社長:災害時やサプライチェーン強靭化は、重要なサステナビリティ経営課題と捉えているからです。自動車部品を多く手掛ける当社にとって、災害による供給ストップは最大のリスクです。いち早く復旧するためには、予備部品は当然ですが、「何を最優先で復旧させるのか」など、適切な判断が求められます。そのためにも、実践的なBCPを構築し、年2回の訓練や消防署を招いた救命訓練を継続しています。
専務:身近なところでは、工場内の「物の配置」や「安全な通路」にも気を配るようになり、普段の5S活動の定着に直結しました。また、災害の被害が大きく、社内で復旧できないときは、他県・近隣の協力会社と連携し、供給を止めないように合同訓練を重ね、有事において、お互いを助け合える「地域ハブ」の体制を構築しています。
社長:こういった活動から「御社ならいざという時も安心して発注できる」と信頼をいただいています。
小島:いつ起きるかわからない災害や、緊急事態発生時への準備がしっかりなされている「事業継続力」は、お客さまとの信頼関係構築や企業価値の向上に直結すると思います。そして何より、「地域と従業員を守り、安定したものづくりを続ける企業」という御社の意気込みを感じました。
小島:いつ起きるかわからない災害や、緊急事態発生時への準備がしっかりなされている「事業継続力」は、お客さまとの信頼関係構築や企業価値の向上に直結すると思います。そして何より、「地域と従業員を守り、安定したものづくりを続ける企業」という御社の意気込みを感じました。
コストと環境対応を両立「環境配慮樹脂」に対するグリーンモノづくり
小島:では、次に環境へのお取り組みについてお伺いします。御社は、再生プラスチックや廃棄予定のものを利用した樹脂など、環境に配慮した素材を活用し、素材の特性にあわせた高品質な射出成型製品製造に貢献する金型づくりを推進されていますね。
社長:現在、企業には環境負荷を減らし、循環型社会へ貢献することが強く求められており、環境にやさしい素材を積極的に採用していく姿勢が、もはや“企業の責任”として不可欠になっています。当社では、再生プラスチックをはじめ、廃棄される、竹・木・紙などを複合した樹脂など環境配慮型素材の活用を進めていますが、こうした素材は費用面や技術面でさまざまな課題を抱えています。
小島:バイオマス素材や再生材ですね。地球環境には優しい素材ですが、やはり費用面や扱いやすさにおいて従来の樹脂とは違いがあるのでしょうか。
社長:そうですね。実はこれらの素材は、一般の樹脂に比べて強度不足や流動性の悪さ、原料によるロットごとのばらつき、金型摩耗などの課題があります。これらは成型不良やコスト高に直結するため、現場では導入の大きな壁となりがちです。
小島:なるほど!環境に配慮したくてもコストや品質のリスクを懸念して導入に踏み切りにくい企業も多いわけですね。そうした課題に対して、御社ではどのようなアプローチで実用面・コスト面との両立を図っているのですか。
社長:当社では、素材特性の弱点を補うための設計提案を開発の初期段階から行っています。具体的には、補強リブを追加するなどの製品形状の最適化やランナー径の拡大、ゲート位置の調整といった金型の改善ですね。
小島:設計の初期段階から最適化を一緒に作り込んでいくわけですね。
社長:また、滞留しにくい流路設計や冷却ラインの見直しを実施しています。これにより、成形条件が格段に安定し、成形サイクルの短縮化を図ることができます。結果として、不良率の低減と生産性向上を同時に実現できています。
小島:素晴らしいですね。また、先日、御社の成形工場の成形風景がTVで紹介されていましたね。
社長:現在、企業には環境負荷を減らし、循環型社会へ貢献することが強く求められており、環境にやさしい素材を積極的に採用していく姿勢が、もはや“企業の責任”として不可欠になっています。当社では、再生プラスチックをはじめ、廃棄される、竹・木・紙などを複合した樹脂など環境配慮型素材の活用を進めていますが、こうした素材は費用面や技術面でさまざまな課題を抱えています。
小島:バイオマス素材や再生材ですね。地球環境には優しい素材ですが、やはり費用面や扱いやすさにおいて従来の樹脂とは違いがあるのでしょうか。
社長:そうですね。実はこれらの素材は、一般の樹脂に比べて強度不足や流動性の悪さ、原料によるロットごとのばらつき、金型摩耗などの課題があります。これらは成型不良やコスト高に直結するため、現場では導入の大きな壁となりがちです。
小島:なるほど!環境に配慮したくてもコストや品質のリスクを懸念して導入に踏み切りにくい企業も多いわけですね。そうした課題に対して、御社ではどのようなアプローチで実用面・コスト面との両立を図っているのですか。
社長:当社では、素材特性の弱点を補うための設計提案を開発の初期段階から行っています。具体的には、補強リブを追加するなどの製品形状の最適化やランナー径の拡大、ゲート位置の調整といった金型の改善ですね。
小島:設計の初期段階から最適化を一緒に作り込んでいくわけですね。
社長:また、滞留しにくい流路設計や冷却ラインの見直しを実施しています。これにより、成形条件が格段に安定し、成形サイクルの短縮化を図ることができます。結果として、不良率の低減と生産性向上を同時に実現できています。
小島:素晴らしいですね。また、先日、御社の成形工場の成形風景がTVで紹介されていましたね。
社長:そうなんですよ。番組では、自動車部品メーカーが進める植物繊維セルロースを樹脂に混ぜ、石油由来樹脂の使用量を減らすという取り組みが紹介されました。このセルロースは、イネ科植物の「ソルガム」から抽出されたもので、再生可能が植物資源・樹脂の軽量化い貢献・CO2削減につながるという特徴があります。この新素材の試作工程の一部として、当社の成形機による成形風景が使用されたんですよ。
小島:いろいろなものを混ぜることができる樹脂の可能性は広がりますね。
専務:当社は金型の設計から試作成形、強度試験まで一貫して自社で対応できる強みであり、樹脂の特性や配合による強度変化をお客様と試行錯誤しながら最適な金型構造を提案できるので、引き続きグリーンサプライチェーンに貢献していきます。
社長:こうした技術的支援を行うことで環境配慮素材ならではの課題を解消し、品質とコストの両立を可能にしています。これからも、お客様が社会から求められる環境責任をしっかりと実現できるよう、モノづくりの現場から貢献していきたいと考えています。
DX化がもたらす技術伝承と未来像
小島:2024年「中部IT経営力大賞2024 奨励賞」を受賞されています。どのような取り組み事例が評価されたのでしょうか。
社長:生産現場の情報収集を積極的に行うと同時に、大型ディスプレイで共有化を図るなど、組織としてIT経営を展開、金型製作、試作成型までの各工程のデータ収集により見える化させた事例です。例えば、これまでは、パッケージのソフトを使用していましたが、自社に合わない部分やコスト高騰の課題がありました。そこでプラットフォームを活用し、生産管理ソフトを自社で内製しました。これまで複雑な形状変更などの見積もり業務等は、私の頭の中の「感覚」と「経験の蓄積」で完全に属人化していましたが、独自の生産管理により「属人化」から「平準化」を進めることができるようになりました。
専務:他には、動画を活用して熟練工から若手技術者への技能承継を図り、若手技術者が自発的に行動できるようになった事例です。
ちょうど退職予定の職人さんがいらっしゃったので、熟練された技術を継承するために動画作成にご協力をいただきました。
小島:動画は若手技術者さんも喜ばれたと思います。昔は「技は見て盗め!」と指導を受けていたと聞いたことがあります。その協力された職人さんも動画に理解を示されたんですね。
専務:そうなんです。「自分の技術を次の世代へつなげていきたい」と共感してくださったんです。また、動画を作成したことで、日ごろの教育にかける時間も削減できました。今後は岐信さんでご紹介いただいたAIも活用しながらスピードアップさせ、引続き人手不足や技術伝承に取り組んでいきます。
小島:最後に、10年後、20年後の未来像を教えてください。
社長:現在金型製造業は仕事を受注できても作れる人がいなければ成り立たないという根本的な課題に直面しています。だからこそ、従業員ファーストの土台をより強固にし「この会社に入ってよかった。」と思ってもらえるような組織を作っていきたいですね。そして将来は、海外生産から国内生産へのシフトを見据え、金型製造だけでなく「量産成形」にも力を入れていきたいと考えています。地域の協力メーカーさんとタッグを組み、当社が金型を作って量産を受注し、それを地域に流すという「プラネットフォーム(ハブ)」のような存在を目指しています。当社が金型の修理やメンテナンスまで一貫して手厚くサポートすることで、地域のメーカー様が安心して仕事ができる環境づくりをしていく方針です。そして、地域からも従業員からも愛される企業であり続けます。
社長:生産現場の情報収集を積極的に行うと同時に、大型ディスプレイで共有化を図るなど、組織としてIT経営を展開、金型製作、試作成型までの各工程のデータ収集により見える化させた事例です。例えば、これまでは、パッケージのソフトを使用していましたが、自社に合わない部分やコスト高騰の課題がありました。そこでプラットフォームを活用し、生産管理ソフトを自社で内製しました。これまで複雑な形状変更などの見積もり業務等は、私の頭の中の「感覚」と「経験の蓄積」で完全に属人化していましたが、独自の生産管理により「属人化」から「平準化」を進めることができるようになりました。
専務:他には、動画を活用して熟練工から若手技術者への技能承継を図り、若手技術者が自発的に行動できるようになった事例です。
ちょうど退職予定の職人さんがいらっしゃったので、熟練された技術を継承するために動画作成にご協力をいただきました。
小島:動画は若手技術者さんも喜ばれたと思います。昔は「技は見て盗め!」と指導を受けていたと聞いたことがあります。その協力された職人さんも動画に理解を示されたんですね。
専務:そうなんです。「自分の技術を次の世代へつなげていきたい」と共感してくださったんです。また、動画を作成したことで、日ごろの教育にかける時間も削減できました。今後は岐信さんでご紹介いただいたAIも活用しながらスピードアップさせ、引続き人手不足や技術伝承に取り組んでいきます。
小島:最後に、10年後、20年後の未来像を教えてください。
社長:現在金型製造業は仕事を受注できても作れる人がいなければ成り立たないという根本的な課題に直面しています。だからこそ、従業員ファーストの土台をより強固にし「この会社に入ってよかった。」と思ってもらえるような組織を作っていきたいですね。そして将来は、海外生産から国内生産へのシフトを見据え、金型製造だけでなく「量産成形」にも力を入れていきたいと考えています。地域の協力メーカーさんとタッグを組み、当社が金型を作って量産を受注し、それを地域に流すという「プラネットフォーム(ハブ)」のような存在を目指しています。当社が金型の修理やメンテナンスまで一貫して手厚くサポートすることで、地域のメーカー様が安心して仕事ができる環境づくりをしていく方針です。そして、地域からも従業員からも愛される企業であり続けます。



