ロゴマークへの思い

小島:御社では、ロゴマークに「おひつ」を使われています。その由来や込められた想いを教えてください。

井川:ロゴマークであるおひつの下には、「応量機」という言葉が添えられています。応量器とは、本来は僧侶が食事を受けるための器を意味する仏教用語です。当社は印刷事業を営んでいますので、「器」の字を印刷機の「機」に置き換えました。おひつから必要な分だけご飯をよそうように、「適時適量」、つまりお客さまにも必要な数量だけ印刷物を提供するという理念を表現しています。

小島:実際に、お客さまから数量に関して様々なご要望があるんですか。

井川:以前は、いわゆる少ロット多品種という言葉がありました。印刷物は残してしまうと転用ができず、捨てるしかないんですね。そこで、より小ロット生産に対応できる印刷機を導入し、「おひつ1号」と命名しました。
井川会長
小島:大量生産ではなく、お客さま一社一社の要望に応えるという姿勢が、現在まで脈々と受け継がれているのですね。
また、御社の強みはこうした印刷だけでなく、商品企画からデザイン、印刷、加工、パッケージ制作までを一貫して提案できる「トータルパッケージ」が最大の特徴だと思います。

井川:一般的な印刷会社ではデザインを外部へ委託するケースが多いです。しかし当社では、自社内にクリエイティブセンターを設置し、企画・デザインの段階から顧客と伴走しています。実際に扱う領域も幅広く、ラベルやフィルム包装だけでなく、パンフレット、カタログ、段ボールなど商品の外装から販促物まで一括して対応できる体制を整えています。
こうした考え方は社名にも表れていて、普通だったら「〇〇印刷」としますよね。そうしなかったのは、創業者が「印刷する会社ではなく、新しい商品に価値を与える会社でありたい。」と考え、「昭和企画」という社名になりました。

小島:なるほど。社名にも、印刷だけではないぞという想いやこだわりが込められていたわけですね。ちなみに、「トータルパッケージ」を実現するために多数のネットワークをお持ちかと思います。一社に依存せず、様々な企業とお取引があるのもかなり強みですよね。

井川:やはり、価格や企画が優れているところ、対応力や提案力の高いところ、それぞれ持ち味があります。そのため、1社だとそこの持ち味しか使えませんが、我々は内容に応じて選択できるんです。

小島:自社の中で、案件に応じて最適な会社を選べるわけですね。

長年続く環境への取り組み

小島:SDGsという言葉が広く知れ渡る以前から、環境配慮型商品を導入されたとお聞きしました。

佐藤:植物由来の資源を原料の一部に使用したバイオマスインキインキが出たときは、いち早く採用しました。当時はそれほど環境への配慮ということは言われていませんでしたが、当然、先んじて変えているので、こちらからバイオマスマークっていうものが使えますよという提案をすることができました。

小島:最近ではバイオマスマークがついた商品を良く目にしますよね。当時、お取引先企業はバイオマスインキの導入をすぐに受け入れられたんですか。

佐藤:そこはお客さまにもよりますが、バイオマスマークを入れること自体にコストがかかるわけではないので、デザインをご提案する中で、このように入れると付加価値が上がりますよという話をしてきました。
佐藤社長
井川:次第に環境について重要視されるようになると、環境負荷に対して当社はこういう取り組みがありますというのを表現できる準備が整っていました。そのため、すぐに手を挙げることができました。

小島:環境への配慮が一般化する以前から取り組んでいたのですね。近年では当金庫からのご提案をきっかけに、PIF(ポジティブ・インパクト・ファイナンス)やCO2排出量の可視化ツール「e-dash」にも取り組み、脱炭素経営を躯体的に前進させていらっしゃいますね。

井川:SDGsという世界的な大きなテーマに対して、当社は何から始めたら良いか分からず、何か取り組むきっかけが欲しかったところに、岐阜信用金庫さんからPIFをご提案いただきました。

小島:近年では、CO2の排出量について、元請けさんなどから求められる機会も増えてきましたね。

井川:そうですね。CO2削減というのは、工場を持つ以上どうしても取り組まなくてはいけない中で、いろいろなご提案であったりチャンスもあったのですが、具体的に動けていませんでした。「e-dash」をご提案いただいて、一歩踏み出すきっかけをつくっていただけました。

自衛隊を支え続ける食品事業

小島:御社には、印刷事業と並ぶもう一つの柱として、食品事業があります。1964年の創業以来、約60年にわたり自衛隊向けの糧食を供給し続けてきた実績がありますよね。災害派遣時にも、全国から集結する自衛隊員へ迅速に糧食を供給されており、長年培ってきた信頼関係は御社の大きな財産となっていると思います。

井川:評価していただいたのは、2011年の東日本大震災の時です。あの時、関東以北のライフラインが止まってしまったので、中部以西が動かなくてはいけませんでした。そこで、私どもがお手伝いしますと手を挙げました。その実績が評価されて、2016年の熊本地震や、様々な有事があった際はご連絡をいただくようになりました。2024年の能登半島地震の時も動けますかと連絡が入りました。

小島:緊急を要する災害対応では、対応できる企業さまは限られていますよね。特に、能登半島地震の時は元日でしたし。

井川:1月1日は、ほとんどの大手商社さんでは動くのが難しい状況でしたが、我々はすぐに動くことができました。

小島:一番早く動いてほしいときに動いていただけたというのは、被災者の方も自衛隊の方も安心ですよね。「いざという時に頼れる企業」として厚い信頼を得ていると思います。
また、自衛隊向けに培った品質を一般企業や自治体へ展開し、安全・安心な備蓄食として提案を広げていらっしゃいますね。

井川:自衛隊の隊員向けに糧食を供給しているということで、一般の方や企業、自治体にも安心してご利用いただけています。

小島:これもまさしく、社会貢献という意味では事業継続への対策として本当に大きな意味があると思います。

品質を支える人と文化

小島:工場見学で最も印象的だったのが、徹底した環境整備です。床には異物一つ落ちておらず、設備は隅々まで磨き上げられていました。

井川:やはり社内の環境を整えるというのは大きなテーマです。特に印刷ですからインキが当然付きます。そういうものを常に除いてあげると、印刷機の寿命が長持ちするんですね。

佐藤:2年前に印刷機の入れ替えがあり、その時に印刷機を買っていただけるという業者さんから、30年使ったとは思えないくらいの維持管理をされていますねと言われて、すごく喜んでいただけたということがありました。毎月の環境整備を30年以上続けてきた成果が出たのかなと。

井川:お客さまの大半がお菓子食品のメーカーさんです。口に入れるものなので、昭和企画さんだったら安心だねと言っていただけるところまで、ベクトルは合わせてかなきゃいけない。

小島:万が一食中毒などがあると、それで一気に信用が落ちてしまい、回復させるまではかなりの時間と労力がかかりますよね。信用というのは一瞬で落ちてしまいますので。

井川:だから毎月の環境整備では、印刷機を分解し溶剤を使って新品同様になるまで磨き上げます。当然、私も社長も、社員と一緒になって参加します。

小島:全社員で社内環境を整えておられますね。以前お伺いしましたが、社長や会長が何か指示をされているわけではないですよね。

佐藤:社員でリーダーを選出して、環境整備用の組織図を作っています。我々も参加するメンバーの一人ですので、環境整備に関しては口を出すこともないです。

井川:反対に指示される側です(笑)

小島:社員の主体性に任せた管理体制であり、自発的に取り組む文化が根付いているのですね。

佐藤:現場のことは現場が一番よく知っていますからね。

小島:この主体性こそが、高品質な製品づくりだけでなく、高い定着率や若手・女性社員の活躍にもつながっていると思います。

受け継がれる応量機の精神

小島:御社は2026年6月において、井川社長(現会長)から佐藤工場長(現社長)へ事業承継を行われました。現社長にどういった想いを繋いでいきたいですか。

井川:当たり前のことは当たり前にできるってなかなか難しいですよね。ただ、当たり前のことを当たり前にできる会社というのは、安心して付き合っていただけると思います。そして、そこには信頼が必ず生まれてきます。それを昭和企画の1つの個性の表現にしたいですし、繋いでいってほしいなと思います。また、経営方針発表会の時に、社長から65期から70期までの中期経営ビジョンやロードマップについて、具体的に1つ1つ発信いただきました。その時に、エンゲージメントをこれからの昭和企画の一番の土台として設けたいというメッセージがありました。そういうところが、これから昭和企画を指名していただく大きな視点として見ていただきたい部分でもありますし、これは時代が変わっても、大切な部分だと思っていますので、そういうところを期待したいです。

小島:お客さまにとっての当たり前、取引先にとっての当たり前、そして社員同士の当たり前。その一つひとつを誠実に積み重ねることが60年以上にわたり御社が選ばれ続けてきた理由であり、これからも変わることのない企業の原点だと思います。では、会長のお言葉を聞いて、これからの展望について社長からもお願いいたします。

佐藤:64年続いたこの企業文化をより高めていきたいと思います。30年続いた環境整備も、「自分たちの会社は自分たちで良くする」というスローガンのもとでやってきて、そういった主体性や挑戦心が実務にも反映されていると思います。社員の主体性を育み改善を積み重ねる企業文化として、さらに発展させていけるような経営を目指していきたいなと思います。
今後のビジョンとしては、製品を納めるまでという従来の役割から、クリエイティブセンターを活用した販促サイト(プロモーションサイト)の制作など、納品後もお客さまに貢献できるサービスの提供を行うなど、先代が築き上げた「信頼」という土台の上に「新たな価値」を積み重ねていきたいです。

小島:印刷会社から、「価値をともに創造するパートナー」へ進化していくということですね。