インタビュイー:株式会社宮崎 代表取締役会長 梅田愼也様
               代表取締役社長 梅田慎吾様
インタビュアー:岐阜信用金庫 専務理事 執行義徳

成長し続ける企業には理由がある 業界TOPとしての誇り

執行:愼也会長には、「ぎふしん未来TALK」の前身である「TALKぎふしん」2005年春号にもご登場いただきました。今回はWeb版「ぎふしん未来TALK」の開設を記念し、愼也会長と慎吾社長のお二人にお話を伺います。株式会社宮崎は、設立当初から古紙を回収し資源化する事業に取り組まれてきました。現在ではリサイクルやサーキュラーエコノミーという言葉が一般的になりましたが、それらをいち早くビジネスとして確立された企業でもあります。当時はどのようなお考えで事業に取り組まれていたのでしょうか。

会長:会社を設立したのは昭和44年ですが、当時は紙を原料とする古紙だけでなく藁を扱う仕事もありました。私は青年時代からこの業界に携わり、古紙を回収して販売する仕事を続けてきましたので、正直当時は「リサイクル事業をしている」という意識はありませんでした。

執行:今振り返ると、結果的にその取り組みが現在の資源循環やサーキューラーエコノミーにつながり、循環型社会の実現とともに事業を大きく発展させましたね。

社長:当社は設立以来、製紙原料である古紙の卸売や処理・加工、廃棄物の再生処理を主力事業としてきました。処理費をいただいて古紙を回収する時代もありましたが、やがて古紙そのものが商品として価値を持ち、流通するようになりました。そうした変化の中で、古紙の再利用そのものが一つのビジネスとして発展してきたと言えます。資源を有効活用し、廃棄物をリサイクルする仕組みは、循環型社会の実現だけでなく、環境保全にも大きく貢献していると考えています。

執行:いわば「仕入れ」の発想ですね。回収した古紙を製紙メーカーへ供給するビジネスモデルを確立されたわけですね。前回の取材から約20年。その間、中川リサイクルセンターの開設をはじめ東京・新木場及び横浜への進出など事業を拡大され、現在では売上高・従業員数ともに当時の4倍以上へと成長されています。この約20年間を振り返って、特に大きな転機となった取り組みについてお聞かせください。

会長:正直なところ、現状はペーパーレス化が進み紙の消費量は減ってきてはいますが、おかげさまで当社は売上が伸びています。その理由の1つとして、M&Aなどによって事業規模を拡大してきた点にあります。事業の縮小や後継者不足に悩む同業他社の事業を承継し、業務提携も積極的に進めてきました。また運送会社をグループ化するなど、事業領域も広げています。

執行:現在では全国80拠点以上を展開され、九州から茨城まで、さらに海外にも営業拠点を構えていらっしゃいます。地域ごとの特性を踏まえながら販売網を築き、独自のネットワークを確立されているのですね。

社長:ありがとうございます。現在は中部、関東、関西、九州を中心にリサイクルセンターや営業所を展開しています。M&Aでグループ化した企業は20社ほどになり、関連会社や協力会社を含めると全国80拠点以上になります。新たなエリアへ進出する際には、会長が必ず現地を視察するのですが、長年の経験から蓄積された判断基準があり「ここならいける」と決定した場所は高い確率で成果を上げて安定経営につながっています。一方で、撤退の判断も早いですね。例えば豪雪地域では、雪の影響で年間を通じた回収が難しく、1年のうち3分の2ほどしか稼働できませんでした。回収量が大きく落ち込むため、撤退を決断したこともありました。地域によっては現地に根差した人、企業でなければ難しいケースもあるということを体感しました。

執行:岐阜県内でも、御社の回収車を見ない日はありません。

社長:ありがとうございます。岐阜県内は岐阜市、西濃、中濃、東濃、北部の方までカバーしています。

執行:岐阜県内で着実に事業エリアを広げ、強固な基盤を築いてこられたということですね。そのうえで、社会課題である環境保全にいち早く取り組み「永遠に前進」という社訓のもと、一貫した経営を続けてこられたことが、業界TOPの地位を維持し続けている理由ですね。

更なる挑戦と信用の拡大

執行:2005年4月に個人情報保護法が施行されましたが、それをビジネスチャンスと捉えられた発想のきっかけを教えてください。また、機密保持システム「M-safe」とは、どのようなシステムなのでしょうか。

社長:「M‐safe」は、お客さまからお預かりした機密書類を回収し、情報漏洩が起こらないよう安全に処理する仕組みです。回収した機密書類をリサイクルセンターまで運ぶ間もGPSで車両の位置情報を管理しているため、リアルタイムで輸送状況を確認できるようにしています。さらにリサイクルセンターには専用カメラを設置し、処理工程を録画しているため、ご希望があればその映像をDVDでお渡しすることもできます。処理証明書は発行していますが、さらに「きちんと処理したことを、もっと分かりやすく証明できないか」と考え、録画システムも導入しました。

執行:回収から処理までの一連の工程を「見える化」することで、安心感と信頼性を高められたということですね。
社長:それでもまだ、処理の途中で情報が漏洩するリスクはないのかと不安に思われるお客さまもいらっしゃいました。そこで待合室を設け、処理工程を全てモニターでリアルタイムにご覧いただけるようにしました。こうした一連の仕組みを「M-safe」と呼んでいます。

執行:このシステムは社長ご自身が考案されたのですか。現在の仕組みが完成するまでには、どのような経緯があったのでしょうか。

社長:はい、私が考えました。まず中川リサイクルセンターに機密書類処理施設を併設することが決まった際に、市場調査をスタート。機密書類を最も多く扱うのは士業だろうと考え、税理士や弁護士の先生方のもとへ何度も足を運び「機密書類の処理で最も重視することは何ですか」と伺いました。すると、料金よりも「情報が漏れないこと」「本当に適切に処理されていること」が何より重要だという声が圧倒的だったため「求められているのはこれだ」と確信。それをどう形にすればよいのか、社員の皆の知恵を借りながら考えました。同業他社の取り組みも視察しましたが、そのまま真似するのではなく、株式会社宮崎流にアレンジ。その一つが「ニーダー」という機械の導入です。洗濯の際、ティッシュをポケットに入れたまま洗ってしまうと紙が細かく固まりますよね。「ニーダー」も同じように紙を練り込むため、文字は完全に判読できなくなりますが、紙の繊維は残るので再資源化することができます。

執行:先ほど、全国80拠点以上を展開されているというお話がありましたが、従業員数も約2,000名にのぼると伺っています。これだけ大きな組織になると、経営方針を全社員へ徹底していくことや組織運営にもご苦労があるのではないでしょうか。

社長:当社の従業員は株式会社宮崎だけでも約1,000名、M&Aでグループ入りした企業を合わせると約2,000名になります。経営方針の徹底については、本社から各拠点へ足を運んで直接伝えています。M&Aでグループ化した企業でも、経営体制がしっかりしている会社はその自主性を尊重していますが、一方で、株式会社宮崎のやり方を積極的に取り入れたいという企業も多く、労務管理や数量管理、古紙回収の手法などについて「非常に参考になった」と言っていただいています。また年に一度、全国の幹部約200名を名古屋市内に集め、ホテルで交流会を開催。毎年参加メンバーを入れ替えることで、会社の考え方や経営方針、新たな戦略などを直接伝えています。参加した幹部が各拠点へ戻り、現場へ伝えることで全社員への周知を図っています。もう一つ徹底しているのが、清掃です。お客さまをお迎えする環境を常に整え、整理整頓を徹底することも、会社への信頼につながると考えていますので。

執行:本日は清須市西須ケ口の本社へお伺いしていますが、社内は隅々まで清掃が行き届き、大変気持ちのよい空間ですね。また社員の皆さんが全員で立礼で挨拶される姿も印象的で、日頃から会社の理念が浸透していることを感じました。

岐阜信用金庫とのつながり

執行:私は2011年1月から3年間、稲葉地支店長を務めましたが、当時から大変お世話になりました。

会長:歴代の支店長は、優秀さと図太さを兼ね備えていましたね(笑)。当社がここまで成長できたのも、ぎふしんさんの支えがあったからです。本社の建て替えについても、「新しい本社にしないと人材採用は難しい」と考えていたため、ぎふしんさんには大変お世話になりました。ちょうど取引銀行を他の信用金庫から岐阜信用金庫へ切り替えようとしていた頃、親身になって対応してくださる担当者に出会いました。その方から「設備資金は私たちが支援します。その代わり私に嘘はつかず、決算書は赤字なら赤字のまま、本当の数字を見せてください。だからといって支援をやめることはありません。」と言っていただいたのです。さらに「機械や車両は、 しんきんリースを利用してほしい。」との提案もいただきました。そのおかげで設備投資を進めることができ、営業所の拡大も一気に加速させることができました。以来、新規設備への投資は岐阜信用金庫、リースはしんきんリース株式会社という形で、お付き合いを続けています。

執行:今では御社も大きく成長されて、むしろ私どもの方がお付き合いをお願いする立場ですが、そんな時代もあったということですね。
社長:執行さんから教えていただいたのは「とにかく本を読み、勉強しなさい」ということ。それがきっかけで経営に関する本を買って、多くのことを学びました。経営を学ぶなかで物理学にも興味を持つようになり「紙」の新たな可能性について考えるようになりました。たとえば自動車のボンネットに活用できないか、カーボン素材に紙を混ぜたらどうなるのかなど、大学との産学連携による研究ができたらと副社長とも話しています。また、会長から社長を引き継いだ当初は、眠れない日が続くほど悩んだ時期もありました。しかし時と経験を重ねるなかで、当社の強みや課題が少しずつ見えるようになってきたのです。会長が何を重視し、どこを見て経営判断をしてきたのかも理解できるようになり、今では経営に対する意見も一致するようになってきました。

執行:経営者としての考えまで受け継がれていく。それも事業承継の良さですね。

会長:私は会社へ来るのが趣味みたいなものですからね。従業員には迷惑かもしれませんが、毎日出社して朝からあれこれ言っています(笑)。

社長:でも、それも大切なんです。会長には思ったことを遠慮なく言ってもらった方が、会長自身の健康にもいいですからね。私たちが安心して仕事ができるのは、大仏様のように会長が後ろでどっしりと構えていてくれるからなんです。会長が第一線を退かれたらどうなるのだろうと考えると、その存在の大きさを改めて感じます。

社訓「永遠に前進」の追求 その先には

執行:リサイクル業界を代表するブランドを目指し「永遠に前進」という社訓のもと歩み続けてこられました。最後に、その社訓に込めた思いと、その原動力についてお聞かせください。

会長:私の考えは社訓そのものです。「永遠に前進」。紙が使われる限り、たとえ業界に当社一社だけになったとしても、挑戦を続けていきます。

執行:「永遠に前進」という社訓は、まさに会長の信念そのものなのですね。

社長:会長にはリバースのギアがないんです。常に前進あるのみで、とにかく挑戦する。それが会長の考え方です。親子なので似ている部分もありますが、一度立ち止まって見直したりするニュートラルな部分を持ち合わせているのが私です。会長は立ち止まって待つくらいなら、人に任せてでも自分は前へ進むタイプ。悲観的に考えることもしません。「厳しい時はみんな厳しい。その中でも、できるだけ影響を小さく抑えられることを目指せばいい」というのが会長の考え方なんです。実際、リーマンショックの時は本当に大変な時期がありました。でも会長から「大丈夫だ。厳しいのはうちだけじゃない。みんな厳しいんだ」と言われて、ものすごく気持ちが楽になりました。「大丈夫、大丈夫」と後ろでどっしりと構え、見守っていてくれる。その安心感は本当に心強いですね。

会長:当社は、市場が好調で誰もが利益を上げられるような時には、あまり事業を拡大しません。むしろ、業界全体が厳しい時こそ、一気に事業を拡大してきました。

執行:景気や相場に左右されず、独自の経営判断を貫いてこられたということですね。

会長:製紙メーカーから、いくらでも高く買うと言われても、当社は必要以上に高くは売りません。価格はお任せします。その代わり、当社が困った時には助けていただく。そうした信頼関係を大切にしてきました。

執行:今後の成長戦略について、重点的に取り組んでいきたいことをお聞かせください。

社長:今後はターゲットを絞り、小売業と物流業への営業、この二つを重点的に進めていきたいと考えています。物流の活発化に伴い、段ボールなど包装材の需要も高まるので、その市場を見据えて取り組んでいます。

執行:さらなる成長が楽しみですね。環境保全という社会課題にいち早く取り組まれてきたリーディングカンパニーとして、今後ますますのご活躍を期待しています。これからもメインバンクとして末永くお付き合いさせていただければ幸いです。本日はありがとうございました。
(左から)岐阜信用金庫 執行専務理事、株式会社宮崎 梅田愼也会長、梅田慎吾社長、稲葉地支店 西脇支店長

金融支援×社会課題解決