インタビュイー:株式会社エヌ・エス・ピー 代表取締役社長 鈴木 欣也様
インタビュアー:岐阜信用金庫 ソリューション営業部長 高木将宏

エヌ・エス・ピーの成長を支える2つの柱

高木:鈴木社長には、「トークぎふしん」NO.121(2014年6月号)へご登場いただいていますが、今回は、その流れを汲みリニューアルしたWeb版「ぎふしん未来TALK」にご登場いただきます。改めて御社の事業内容をお聞かせいただけますか。

鈴木:当社は、1972年2月に私の祖父が創立し、父、私と3代に亘り、「住宅基礎関連事業」と「土留・レンタル事業」の2つを柱として、事業を成長させてきました。いちばんの主力製品である「住宅用基礎鋼製型枠(NSPパネル)」は、家づくりで大切とされる正確な基礎工事とともに、施工作業の作業の効率化を実現し、住宅向け型枠のシェアで74%を占め、市場から高く評価をいただいています。また、NSPパネルは、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震における仮設住宅建設時にも使用されました。そして、土木工事において、掘削した場所の土砂が崩れるのを防ぐ「土留関連製品」は、地下埋設工事用土留レンタルでシェア53%となっています。この土留製品も、東日本大震災のインフラ復旧(上下水道工事)に使われました。その他、さまざまな住宅関連製品の開発にも取り組んでいます。2022年には創立50周年を迎え、近年では全国に拠点を拡大しています。

高木:御社の主力事業が、日常の安全な生活基盤を守るのみならず、震災後のインフラ復旧という社会課題にも大きく貢献してみえるのですね。「トークぎふしん」の取材時は、社長就任(2009年)から5年経過された頃で、そこから更に12年が経っています。改めて、鈴木社長のご経歴を簡単にお聞かせいただけますか。

鈴木:私は大学を卒業後、すぐ当社へ入社しました。社内研修制度でアメリカへ行き、2年間研修を受け、その後本社へ戻り、3年程製品開発に携わりました。部長、常務を経て、2009年8月に社長に就任、既に17年が経過し、現在に至っています。いちばんの転機となったのは、本社へ戻り、プロジェクトで自動機の製造に関わったことです。設計から製造まで、全て自分で調べて進めていきましたので、とにかく大変でした。しかし、自分で調べてやり遂げたことで、原価計算の仕組みが分かり、コスト意識が芽生えたことと、開発の苦労という従業員の気持ちを理解することもできたので、現在の会社経営にはとても役立っています。

高木:現場感覚をお持ちで、財務にも強い鈴木社長だからこそ、ここまで会社を成長させることができたのですね。御社のパンフレットを拝見すると、社長に就任されて以降、20以上の新製品を開発、販売してみえます。特にこれはという製品はありますか。また前回の取材の際、「住宅基礎関連事業」と「土留・レンタル事業」の2本柱に加え、もう1本の柱をつくりたいとお話されていますが、いかがでしょうか。
鈴木:新たなヒット商品としては、「Nクール」を2012年頃に販売開始しました。当時はまだ1万着くらいしか売れていなかったのですが、昨今の夏の現場では欠かせないアイテムになっていると思います。実は当時、職人さんが現場で倒れたんですね。コンクリートを打つと、下から熱が出て、熱中症になってしまうのです。これでは現場が止まってしまうので困ったな、何か対策をしなくてはいけないということから、当社で熱中症対策の服を創ろうと考えました。しかし、既に同様の服を他社が創っていたので、一緒にやらせてくださいということで取り扱いが始まりました。そこから紆余曲折があり、やはり自分たちが創りたいと思ったモノを創りたいと思い、今では当社でオリジナル商品を創っています。冬の寒さ対策として、「Nヒート」も創りました。

高木:まさに、昨今の気候変動の影響への対策としては必需品ですよね。

鈴木:あとは、組み立て式プールも創りましたね。幼稚園の園庭は狭いので、夏だけ使って、シーズンオフにはしまえるということで一定の需要はありました。システム遊具「創造」は、木曽ひのきの間伐材で作りました。今は、安全基準が厳しくなってしまったので、あまり売れなくなってしまったのですが。
鈴木:「Nクール」は主力商品ではありますが、当社はウェアメーカーではないので、第3の柱とまでは言えません。今は、スウェーデンの「スチールリスト」という会社と組んで、土を掘る油圧ショベルに取り付けるアタッチメント「チルトローテータ」を仕入れて販売しています。これはバケット(油圧ショベルの手先にある土をすくうスコップの部分)が回転するので、重機から降りずに一人で作業ができるのです。この先、人口減少が進む日本では、需要も増加していくと思います。
後は、現場の作業性をもっと上げたいねということで、バケットの先端に「マシンガイダンス」というセンサーをつけた重機を取り扱っています。自分が今どういう作業をしているのか、手元で見られて確認できるということが可能になります。当社のお客さまは土木建築関連のお客さまなので、どんなに小規模の先でも必ず重機を1台は持っているんですね。土を掘る時に、重機の近くに作業員を配置しなくても、自分で見られる状態になるので安全性も高まりますし、現場に1人で行くことが可能になるので自由度も高まります。「レーザーレベル」というレベル材を扱っている会社と一緒に取り組んでいます。

高木:一緒に組む会社も常にアンテナを張って探してみえるのですか?
鈴木:実は、この回転レーザー「チルトローテータ」を国内に導入したのは当社が初なんです。当社の会長が海外の展示会に行って、情報を収集していたので、これは面白いと思い紹介していただいて仕入をし、最初に国内で販売したのです。しかし、実際にはなかなか思うように売れなくて、10台だけ仕入れて販売しました。それが実績として残っていたので、その後日本で販売網を広げたいという流れになった時に、当社が日本のパートナー企業として選ばれたという訳です。ただ、当時はまだ結構高価だったのですが、「うちはこれだけ売るからこの値段にしてほしい」と交渉して承諾していただきました。その結果、ものすごい勢いで販売して、その当時、おそらく世界で一番販売したと思ってます。

高木:世界一とは!簡単に残せる実績ではないですよね。

鈴木:導入した時というのは、やはりものすごい勢いで膨れ上がるんですよ。「Nクール」もそうだったのですが、そもそも前年が売れてないので、1000%という伸びをするのです。本当にボンボンボンと桁が変わって膨れてきて、相当面白かったです。

高木:社長もそうでしょうが、社員さんのエンゲージメントもかなり上がりましたね。

社会課題解決×金融

高木:さて、この度、当庫のPIF(ポジティブ・インパクト・ファイナンス)をご利用いただきありがとうございます。持続可能な社会の実現への貢献も含め、今回のご資金をご利用いただく決め手はどこでしたか。

鈴木:いちばんは、取り組みが公表されるとお聞きしたので、他社と比較して当社はどの位置にいるのだろうということに興味がありました。実は、当社の事業内容からすると、もともと環境負荷は少ないんですね。もちろん、営業活動は行いますので、移動に伴う環境負荷はあるのですが、昔から梱包材をほとんどつけていないので、そもそも廃棄物が少ないのです。材料を、「木」から「鉄」に切り替えていたので、木材の消費も抑えられていますし、脱炭素化の指標であるCO2排出量を数値化するとどうなんだろうとは思いました。ただ、もともと事業に組み込んでいるので、今後、積極的にCO2を削減しようという目標を設定して取り組める内容があまりなく、インパクトは少ないです。

高木:事業活動の中に、環境意識が組み込まれていたのですね。
株式会社エヌ・エス・ピー 鈴木社長、岐阜信用金庫 塩谷中津川支店長、國枝理事、高木ソリューション営業部長
鈴木:現場に直送するものが多いため、ちょっとした緩衝材をつけるのみで、できるだけゴミとして出るものを減らしていますので、大手企業からは評価していただいています。そこにコストをかける理由はないと思いましたので、どちらかというと経済合理性の観点でそうしたのですが。当社の場合は、仮設材なのでそれが許されたという面がありますが、生産工場を営んでいる割には、ゴミの排出量は相当少ないと思います。「鉄」を使っているので、「鉄」はゴミにならない。鉄は回収してまた再利用していきますからね。

高木:最初の入り口は経済合理性からだとしても、結果として環境負荷低減にもつながっているということですね。更に鉄は究極のリサイクル材。事業自体がとてもサステナビリティですね。

鈴木:精錬事業がそういうものだったので、その流れもあると思います。たとえ樹脂を使ったとしても、端材が出たら、もう一度製品に混ぜて使うということもやっています。その方がコストも下がるし、事業が持続できている一番の理由はそこだと思います。理屈にあっているから、無理なく続けられるのだと。もちろん、箱に入れてほしいと言われるお客さまもいらっしゃるので、その場合は個別に対応しています。ただし、コスト(箱代)はかかりますよということで、環境負荷に係わるコストは、お客さまからご負担いただいています。

高木:ちゃんとお客さまサイドに立ちながら、ビジネスとしては合理的に考えられている面もあるのですね。
さて、いわゆるサステナブル融資を当金庫が取り扱うようになり、4年目に入ります。岐阜信用金庫を代表するお取引先に、PIFをご利用いただけるということは、地元の企業様に対しても、強力なメッセージとなります。本日は、先般お渡しした評価書に加え、記念の盾をお持ちしました。この盾は、東濃地方の木材の間伐材を使っており、名古屋市にある就労支援施設で一つひとつ製作してもらっています。あらゆる面で、社会課題解決に取り組まれている企業の証として、どこか目立つ場所に置いていただけますと幸いです。

鈴木:ありがとうございます。受付に、SDGs宣言書と並べて置いておきます。

ないものはつくればいい

高木:お父様から会社を受け継がれて随分経ちますが、事業承継についてはいかがでしたか?

鈴木:父からは、2004年頃に「60歳で一線を退くつもりでいる。そのつもりで社長になる準備をしてほしい。」と言われました。正直驚きましたが、気持ちの整理をする時間が十分とれたのと、父は父で、私が社長になっても困らないような体制と組織づくりを進めてくれていました。父からいちばん最初に言われたのは、「会社は社員のためにある。」「ないものはつくればいい。」という、この2点でした。当社は、もともと下請けだったので、親会社の売上に応じて、社員を雇用しろとか解雇しろとかと言われていたんですね。自分たちではコントロールできないことに対して、自分の会社なのになぜ社員を守れないんだ?おかしくないか?社員を守りたいよね!ということから、それにはどうすればいいかと考えた時に、メーカーになるしかない。自分たちでモノを創って売ろうというのが始まりなんです。

高木:鈴木社長が社員をとても大切になさっているのは、先代から受け継がれた思いがあるのですね。
鈴木:常に自分たちで工夫してモノを創ろうという考えがあるので、それを実現するためには、やっぱりお客さまの声を聞いて、それに応えていかないといけない。営業主体になると、どうしても商社のようになってきてしまうんですね。それだと、仕入れて売ればいいという感覚になるのですが、当社の存在価値がなくなってしまうので、そうではなくて、お客さまの声を聞いて創るというのが基本なんです。もちろん、仕入れて販売するモノもありますが、「ないものはつくればいい。」というのが当社の根底にあり、それが当社にとっていちばん大事なことだということは、社員に徹底しています。売上目標はありますが、それが目標ではないということを繰り返し話しています。

高木:お父様からの教えもあったのでしょうが、失敗してもいいから試してみようという、いわゆる心の広い風土があるのと、創ってみようの起点になるのが、お客さまからの要望というところが素晴らしいと思います。

鈴木:ありがとうございます。そうですね。お客さまに、何かお困り事はないですか?と直接聞いても、これ困っているという方はほとんどいないです。なので、潜在ニーズというか、それを掘り起こすのが一番大事なポイントだと思っています。やはり現場に入って直接見て、お客さまとお話しし、手間がかかっているところをこうしたらどうなんだろうと対話をしながら、お客さまの情報と擦り合わせて、試作品を試していただく。使っていただいて「これ便利だね。」と言っていただけると、商品化につながっていきます。

高木:御社が脈々とやってみえるのは、こういうものを売りたいから創ろうではないということですね。思いついたらどんどん試す。思いつくのは人。当社の製品は、人の気持ちが創りだしているということですが、お客さまの声や社員さんの発想をどんどん取り入れられているということですね。

鈴木:はい。当社はオーダーをもらって作る仕事はあまり多くはなくて、お客さまからこういうことをやりたいというご相談をいただき、じゃあどういうものを創りましょうかということで一緒にやっていく感じです。それが面白いところなんだと思います。あとは、少ロットだと他社では断られてしまうところを、当社は引き受けますから。

高木:鈴木社長は営業に対して、「これでもかというくらいの提案が必要」、お客さまの満足度を高めることを第一として、提案をし続けることが重要であると仰ってみえます。成果も大事であるが、プロセスが先に繋がっていくというスタイルは、当金庫が現在行っている育成方法と重なる部分があります。この育成スタイルは、社長の代になって力を入れられたのでしょうか。

鈴木:いえ。私の代に何か変わったというより、少し整理された感じだと思います。違うのは、創業者はトップダウンだったと思うのですが、私は組織運営に変えていこうと思って、皆さんにそれぞれやっていただくようにしたと言えると思います。

自由を受け入れる社風は企業を大きく成長させる

高木:先般、社員旅行を実施されたとお聞きしていますが、皆が長く勤務でき、より良い人生を送ることができる職場にしたいとのことで、社員さんを大事にされている社風が感じられます。

鈴木:はい。今年は250名程度でオーストラリアに行きましたが、過去最大の規模だったのは、社員の家族も含め600名以上でハワイに行った時です。東北の震災があった後にも、家族も一緒に行こうということで仙台に行きました。東京にも行きましたよ。うちの社員旅行は、会社が朝食付きでホテルを手配し、3泊4日(もしくは5日)の日程で組むので、中2日くらいはあるんです。社員合同のパーティに出れば、他は自由行動なんですね。そうすると、社員旅行の機会に皆が好きなことができる訳ですよ。今はネット予約もできるので、自由に好きなことをやって楽しんでいるので、満足度も高いと思います。

高木:毎年やってみえるのですか?

鈴木:さすがにコロナ禍は中止しましたが、社員旅行は毎年やってます。私が入社した1999年頃は、いろいろな事情から5~6年やってなかったのですが、久しぶりに実施したら、家族がいる社員は、自分たちだけで旅行に行けるタイミングがなかなかないので、すごく喜んでいました。家族も含めたハワイ旅行では、ご家族から凄く喜ばれました。でも、社員からはこれは社員旅行じゃない。家族をエスコートしなければならないから休まらない。という意見もありましたが(苦笑)。いつかまた、周年事業などのタイミングで復活させたいとは思っています。
東京の時は、特に女性社員に喜ばれましたね。それぞれ家庭の事情がありますから、東京だと新幹線の便もたくさんあるので、あとは家庭の事情に合わせ旅行の日程を組み立てることも可能なんです。パーティさえ出席すれば、自由な便で上京して、行動も自由。東京在住の友人や親戚と会ったりする社員もいましたね。旅行が終わった後にそれぞれが費用を請求するという仕組みにしている点も良いのかもしれません。

高木:とても自由度が高くていいですね。それも社風なのですね。

次の100年に向けた展望

高木:最後に、今年が創立55周年ですが、半世紀をワンタームとすると、従業員さんとともに描く未来、次の100年に向けた社長の展望をお聞かせください。
    
鈴木:当社には、建築土木業界でこれまで築いてきたご縁とつながりがあるので、やはりお客さまのお役に立つよう、価値あるものを提供していく。いつも社員には、この先もそれをずっと続けながら成長していきたいと話してきました。実は、私が入社した時の売上高は100億円なかったのですが、100億円目指して達成した時は皆が少しほっとしたんですね。でも、いや次は1000億円を目指そう、例え私たちの代で達成できなかったとしても、そこを目指していきたいと思っています。本当は、すでにシェアもあるし、規模を小さくした方が簡単なんだと思いますが、それでは成長が止まってしまって面白くないし、いつかは消えてなくなってしまうと思うのです。やはり、新しいものをどんどん考えて、これは面白そうとか、お客さまが喜ぶとか、お客さまから「助かった」「楽になった」と感謝されるような仕事を、皆で話し合いながら続けていきたいと思います。当社へ入社したら、「これは私が創った!」と言えるモノをぜひ創ってほしと思います。

高木:さらに成長していかれる御社の未来が楽しみですね。本日は本当にありがとうございました。
左から、岐阜信用金庫 塩谷中津川支店長、株式会社エヌ・エス・ピー 鈴木社長、岐阜信用金庫 高木ソリューション営業部長

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